私を探さないでください

旅に出ます。お願いです。私を探さないでください。

無理:奥田英朗(文藝春秋)

最後の一文が、この小説のすべてを表しているようです。

すべてが灰色に見えた。
それはこの町の色であるかのようだった。


市町村合併、福祉行政、生活保護
若者、オタク、ひきこもり、
公共事業、癒着、世襲
不倫、離婚、親権、
新興宗教、介護、外国人労働者
大型ショッピングセンター…

こんなキーワードをひととおり問題提起しておいて、
なにも解決させずに、
「灰色がこの町の色」で締めくくる。

ある意味、憎たらしいくらいの演出です。


舞台は会津地方、季節は冬。
スクリーンにしてほしい作品です。