私を探さないでください

旅に出ます。お願いです。私を探さないでください。

宮本常一離島論集第一巻(みずのわ出版)

宮本常一先生の離島への愛情みたいなものがよく伝わってきます。
また、昭和までの離島の事情が手に取るようにわかってきます。
勉強になりました。

島に暮らす、その1

本著「伊豆七島」の中で「伊豆諸島巡回報告」を引用した一文。

島民は安然としてこの島に住み、
労苦して焦石灰土を耕作し艱難に甘んじ、
豊凶は自然にまかせ、
一食一眠、
いやしくも愛島の衷情を失わないのは感嘆にたえないところだ。

名文だ。

島に暮らす、その2

1885年赤堀以下23名が川辺十島(トカラ)を調査した後の復命書にある文。

各島大同小異で、昔の風をまもり、
開明進歩がどういうことかもわきまえず、
すべてがめずらしいことばかりであった

まだ見ぬトカラに思いを馳せて余りある響きです。

道の必要性

宮本常一先生の著作を読んでいると本来の「道の必要性」というのがよくわかります。
塩の道とか。
離島論集の「佐渡をまわる」の一文。

農地が分散している上に農道がわるいのである。
(中略)
一日八時間労働して年間二八0日働いているが、
そのうち八00時間すなわち一00日は
耕地への往復に費やしているというのである。
農業生産力の低さにはこういう問題がひそんでいるのである。

農道をちょこっと整備するだけで、
生産性がグンと上がる様が、
手に取るようにわかります。

技と練習

離島論集、農業技術の改良の中での、岐阜市外鏡島村の篤農家山田弁次郎氏の言。

百姓には玄人はありません。
みんな素人です。
ムギまきにしても50年百姓するとしても50回しかやらないのです。
50回では玄人にはなれません。
(中略)
私は毎晩ムギまきの練習をしました。

練習、というのは、技というのはこういうものですよね。